任意後見制度

任意後見制度とは、今現在は十分な判断能力はあるが、将来の判断能力の低下に備えて、「ご自身が信頼できる方」との間で、判断能力が不十分となった時に、「どのような支援をお願いしたいか」を予め任意後見契約によって決めておく制度です。

任意後見制度を利用する最大のメッリトは、「援助者と支援内容をご自分の意志で決められる」ということです。

任意後見契約から効力発生までの流れ

1.契約内容の決定

「援助者を誰にするか」「支援内容をどうするか」などの契約内容を決めます。

2.任意後見契約の締結

任意後見人候補者(任意後見受任者)との間で「任意後見契約」を結びます。

任意後見契約は、適法かつ有効な契約を結ぶ必要があることから、公証人の作成する公正証書によることが必要とされています。

3.任意後見契約の登記

任意後見契約の公正証書が作成されると、公証人により、法務局において任意後見契約の登記がされます。

4.任意後見監督人の申立て

ご本人の判断能力が低下してきたら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立てを行います。
任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が発生し、任意後見が始まります。

判断能力が低下してきた時とは
法定後見制度の補助の要件に該当する程度に判断能力が低下したと認められる状況になったとき。

任意後見監督人選任の申立てができる方
本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者

5.任意後見監督人の登記

家庭裁判所により、法務局において任意後見監督人の登記がされます。

任意後見契約との併用契約

任意後見制度は、契約締結後、ご本人の判断能力低下までに数10年かかることも考えられます。
任意後見人受任者が、契約締結後、ご本人と年に数回しか会わないようでは、ご本人の状況をしっかり確認することができません。また、まだ判断能力は十分にあるが、病気やケガなどで体が不自由になってしまうことも考えられます。
そうした場合に備えて、「見守り契約」や「任意代理契約(財産管理契約)」を結んでおくこともできます。
また、ご本人死亡後の葬儀、埋葬、死亡届等の諸手続きなどに関することを、「死後事務委任契約」として、結んでおくこともできます。

1.見守り契約とは

任意後見人受任者が、ご本人と定期的に連絡を取り合い、任意後見をスタートする時期について相談をしたり、判断したりする契約です。契約後は、月に1回程度面談し、健康状態などを確認します。

2.任意代理契約(財産管理契約)とは

ご本人の判断能力はまだ低下してはいないものの、病気やケガにより体力が衰え、体が不自由になったりすることで、ご自分で財産管理が十分できなくなることも考えられます。
任意代理契約(財産管理契約)を結んでおくことによって、任意後見がスタートするまでの間も、代理人により財産管理を行うことができ、より充実した支援が可能になります。

3.死後事務委任契約とは

任意後見契約を締結した場合、ご本人の死後、財産管理の計算や引渡しの事務などは任意後見人が行いますが、葬儀・埋葬・死亡届等の諸手続きは任意後見事務の範囲外となるため、当該契約を締結しておくことにより、死後事務を滞りなく行うことができます。
但し、遺言書がある場合には、その内容と抵触しないよう気を付ける必要があります。

任意後見監督人選任申立ての必要書類(名古屋家庭裁判所の場合)

1.申立て書類

  • 診断書、診断書附票(裁判所指定の診断書様式での作成が必要)
  • 申立書
  • 本人に関する照会書、本人の財産目録、本人予算収支表、親族関係図
  • 任意後見人受任者に関する照会書
  • 任意後見監督人候補者に関する照会書(候補者を指定する場合)

2.必要書類

  • 本人の戸籍謄本、任意後見登記事項証明書、任意後見契約公正証書の写し
  • 任意後見監督人等候補者の住民票または戸籍の附票(候補者を指定する場合)

3.本人の財産に関する資料

  • 不動産登記事項証明書
    未登記の場合は固定資産評価証明書(固定資産税納税通知書のコピーでも可)
  • 預貯金の通帳、証書のコピー(過去1年分のコピー)
  • 有価証券または取引残高明細書のコピー
  • 各種保険証券のコピー
  • 金銭消費貸借契約書、住宅ローン契約書等の負債を証する資料のコピー

4.本人の収支に関する資料

  • 年金振込通知書、確定申告書等の収入を証する資料のコピー
  • 医療費や施設費用の領収書(直近1ヶ月分)、税金の納税通知書、社会保険料の納付書等の支出を証する資料のコピー

任意後見契約の費用

任意後見契約書作成費用 90,000円 (消費税別)

別途、公証人費用として約20,000円が必要になります。

任意後見監督人選任申立書作成費用 90,000円 (消費税別)
見守り契約書作成費用 30,000円 (消費税別)

別途、公証人費用として約11,000円が必要になります。

任意代理契約書(財産管理契約書)作成費用 50,000円 (消費税別)

別途、公証人費用として約11,000円が必要になります。

死後事務委任契約書作成費用 50,000円 (消費税別)

別途、公証人費用として約11,000円が必要になります。

必要書類取得費用(戸籍等1通につき) 1,000円 (消費税別)

実費(任意後見監督人選任申立 名古屋家庭裁判所の場合)

診断書作成費用 5,000円~10,000円程度
任意後見監督人申立費用 800円 (印紙)
登記費用 1,400円 (印紙)
郵便切手 500円×2
320円×1
84円×11
10円×11
5円×1 
鑑定費用(精神鑑定が必要な場合) 50,000円程度

その他必要書類(戸籍等)の実費が必要になります。

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