交通事故と労災保険
前回のコラムで、交通事故の場合に健康保険が使えることをご紹介しましたが、交通事故で健康保険が使えない場合があります。
それは、業務中や通勤途中の交通事故(労災事故)の場合です。
交通事故の年間発生件数約100万件のうち、およそ3割が労災事故と言われており、決して少ない件数ではありません。
労災事故(交通事故)により治療を受ける場合には、自由診療か労災保険を利用するかの選択をすることになりますが、被害者にとってどちらの方がメリットが大きいかを検討しましょう。
自由診療の場合、診療報酬を1点につき20円以上で決めている病院が多いことは前回のコラムで説明しましたが、労災保険の場合は1点につき12円と決まっています。
前回のコラムを読んで頂いた方は、この説明だけでなんとなく労災保険を使った方が得なんじゃないかと思われたのではないでしょうか。
労災保険を利用して治療を行った場合、労災保険には健康保険のような自己負担(3割)がありませんので、被害者側にも過失が発生する事故の場合であっても、治療費全額を労災保険が支払ってくれるので、被害者の治療費負担は0円となります(治療費全額を負担した労災保険から加害者側に対して、加害者過失分の求償が行われます)。
また、加害者が任意保険に加入していなくて自賠責保険にしか請求できないような場合には、治療費総額を抑えることができるので、自賠責保険の傷害補償の120万円の限度額を有効に利用することができます。
このように、被害者に過失がある事故や、加害者が任意保険に加入していないような場合には、労災保険を利用することにより、自己負担なく治療費の総額を抑えることができるので、被害者側のメリットは大きくなります。
更に、労災保険では、事故により仕事を休業した場合、平均賃金の60%の休業補償給付と、20%の休業特別支給金の支給を受けることができます。
加害者側から休業損害の補償が受けられた場合、休業補償給付は賠償金から差引されますが、休業特別支給金は控除されませんので、労災保険を利用した場合、実際の休業による損害よりも多くの金額が受取れることになります。
上記のことからも、労災事故の場合には、積極的な労災保険の利用をお勧めします。
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交通事故と労災保険について簡単に説明しました。交通事故(労災事故の場合を含む)の場合、健康保険や労災保険を利用することで治療費を抑えることは、被害者側にとってメリットがあるということを覚えて頂ければ幸いです。
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