交通事故と健康保険
突然ですが、私から皆さんに問題です!「交通事故で健康保険は使えるでしょうか?」
ご存知の方もお見えになると思いますが、答えは「使える」です。
※但し、「第三者行為による傷病届」を健康保険に提出する必要がありますが、この手続きは難しいものではありません。
過去に下記の通達が厚生省(現 厚生労働省)から出されています。
自動車による保険事故の急増に伴い、健康保険法第67(現行57)条(第69条ノ2(現行58条)において準用する場合を含む。) 又は国民健康保険法第64条第1項の規定による求償事務が増加している現状にかんがみ、自動車損害責任保険等に対する保険者の求償事務を下記により取扱うこととしたので、今後、この通知によるよう保険者に対し、必要な指導を行われたい。
なお、最近、自動車による保険事故については、保険給付が行われないとの誤解が被保険者の一部にあるようであるが、いうまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変わりなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるよう指導されたい。
また、健康保険法施行規則第52条又は国民健康法施行規則第32条の2の規定に基づく被保険者からの第三者の行為による被害の届け出を励行されるよう併せて指導されたい。
皆さんの中には、交通事故で病院にかかったとき、「交通事故の場合は健康保険は使えません!」と言われた方もいらっしゃると思います。
たしかに交通事故の場合、健康保険での診療を受付けず、自由診療のみの対応をしている病院がいまだに存在することも事実です。
では、「なぜそのような対応をするのか?」、簡単に言えば自由診療のほうが儲かるからです。
健康保険での診療報酬は1点につき10円と決まっていますが、自由診療の場合は1点につき20円以上で診療報酬を決めている病院がほとんどです。
また、実際に事故の被害に遭われた方も、「加害者にケガを負わされたのになぜ自分の健康保険を使わなければいけないのか?」とか、「どうせ相手(または相手側保険会社)が払うんだから自由診療でも構わない!」と言われる方もいらっしゃいます。
健康保険を使うメリット
では、健康保険を使う被害者側のメリットとは何でしょうか?下記の事例でご説明しましょう。
事例
過失割合 | 被害者30% 加害者70% |
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治療 費 | 自由診療の場合 200万円 |
保険診療の場合 100万円 |
自由診療にて治療を行った場合、相手側保険会社が治療費の200万円を直接病院に払ってくれたとしても、最終的な示談の際には、余分に支払った被害者側の過失分60万円(被害者過失30%)は、慰謝料や休業損害などで支払ったものとして差し引きされます。
健康保険を使って治療を受けた場合、患者の負担は通常3割なので、病院は相手側保険会社に30万円を請求し、残りの70万円を健康保険に請求します。
病院から70万円の請求を受けた健康保険は、支払った70万円のうち被害者過失分21万円(70万円の30%)を除いた49万円を相手側保険会社に求償します。
相手側保険会社は、直接病院に支払った30万円と健康保険に求償された49万円の合計79万円を支払うことになります。
つまり、相手側保険会社は、100万円のうち70万円(加害者過失70%)の負担をするところ79万円を支払っているので、余分に支払った9万円が被害者側の負担となります。
過失相殺後の治療費の被害者側負担が60万円と9万円では、どちらが得か比べるまでもないですよね!
上記のように被害者側にも過失がある事故の場合や、加害者が任意保険に加入していなくて自賠責保険にしか請求できないような場合には、健康保険を使って治療を行う方が被害者にとってはメリットが大きいと思います。
では、「被害者側に過失がない場合は自由診療でも構わないのか?」と言うと、必ずしもそうではないです。
ご経験された方もいらっしゃると思いますが、相手側保険会社は少しでも出費を抑えたいと考えていますから、治療が長引いて治療費が高額になってきた場合、症状固定などを理由に治療の打ち切りを言ってくる場合があります。
つまり、相手側保険会社にしてみれば、100万円払うより200万円払う方が負担が大きく、治療を早く打ち切り出費を抑えようとしてきます。
もちろん、健康保険を使って相手側保険会社の負担を100万円軽くしたからと言って、被害者に100万円余分に慰謝料を払ってくれるわけではないですが、示談の際に全く考慮されないとは言えない?・・・かも。
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交通事故と健康保険について簡単にご説明しました。もし、交通事故で健康保険を使わせてくれない病院があれば、転院したほうがいいかもしれません。
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